メ―メ―の株・投資ブログ

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アラサー兼業投資家。長期厳選小型グロース株投資。2019年12月に株式投資を始めるもコロナショックを経験。日本株オンリー、独学で2倍株を3回、3倍株を1回達成。投資に関する思いつきをアウトプットします!

【投資の勉強】水晶デバイス事業の今後について考える

公開:2022年2月25日

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産業の米として半導体が、産業の塩として水晶デバイス事業が知られています。半導体についてはよく聞く機会があると思いますが、水晶デバイスとはそもそも何だ?と疑問に持たれる方も多くいます。そのため、この記事では水晶デバイス事業の今後についてわかりやすく解説します。

本記事の内容

 

水晶デバイスとは?

水晶デバイスとは、水晶振動子・水晶発振器のことをさし、真空の容器の中にとても薄い水晶片が半分浮くような形で入っている電子部品です。水晶片には電極が付いており、電気を流すと規則正しく振動します。この振動を電気に変換して取り出すことで、規則正しく振動する電気信号を得ることができます。この電気信号こそが、電子機器を正常に動かし続けるためには必要不可欠となっています。そのため、正確な時間の基準や安定した周波数が要求されるスマートフォンや自動車、医療機器などのエレクトロニクス製品に、必ず水晶デバイスが使用されています。

産業の塩として知られる水晶デバイスは、多種多様なエレクトロニクス製品で使用されています。例えば、今後の自動車市場では自動運転の発展により、センサーやカメラ、通信技術が展開され、水晶デバイスの需要がさらに高まります。また、アレクサのような物と物をつなげる通信技術 IoTもますます発展すると予想されること、スマートシティ構想などからも、各種製品への水晶デバイスのニーズは長期的にみて高まると考えられます。

 

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水晶デバイスの木(出典:日本水晶デバイス工業会)

 

日本の水晶デバイス事業

上述のように水晶デバイスは今後さまざまな製品に組み込まれていくと予想されます。このような状況において日本企業のマーケットシェアはどうなっているのかと言うと以下のグラフの通りです。

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出典:J-Chip Consulting

日本の企業がマーケットシェアにおいて大きな比率を占めています。日本は産業の米と称される半導体では世界で数年技術的に遅れていると言われながらも、なぜ産業の塩と称される水晶デバイスでは世界トップ級にいるのでしょうか。

これは、「フォトリソブランク加工」と呼ばれる新たな量産化技術によるものと考えられます。

バッテリー以外のスマホ部品は小型化が進むとされ、日本電波工業が開発に着手したのは10年以上前、約5年前に量産化できたが、4Gスマホでは機械加工品も部品仕様を満たしていたため、フォトリソ加工品の優位性は高くなかった。しかし、5G対応スマホ用の水晶部品はフォトリソ加工以外で作るのは難しいとされ、低価格品で攻勢をかけていた台湾などの海外勢はフォトリソ加工での量産に成功しておらず、日本企業は技術による競争優位を再び確保しました。また、水晶振動子の平均大口価格は1個15円前後と上昇傾向にあります。一部の国内メーカーでは、ガラケー向けで高い競争力を誇った2000年代前半以来、約20年ぶりの事業機会が到来しつつあります。

 

水晶デバイス事業を牽引する日本企業

水晶デバイス事業を手がける代表的な企業は、セイコーエプソン、京セラ、日本電波工業大真空、リバーエレテックがあげられます。

このうち、日本電波工業大真空、リバーエレテックが水晶デバイス専門の企業のため、この3社を比較してみていきます。

 

日本電波工業

電波の送受信に欠かせない水晶デバイスで世界2位級。車載用が主体、日中マレーシアで生産をしています。決算短信をはじめにみていきます。前年同期比で売上10%、利益20%以上の成長を示す箇所は水色でマークしています。

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これは決算短信の売上や利益を並べて比較した表です。これより、2021年2Qから利益が伸び始め、2022年より売上の伸びが認められます。

次にこの表をQoQで比較できるように計算します。

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そうすると、このようになり2021年2Qから明確な成長が認められます。しかし、2022年3Qでは売上・利益成長の大きな鈍化が認められます。連結業績予想においてマレーシア工場の豪雨浸水による影響とされているが、半導体不足の影響が大きいと考えられます。

次に損益計算書をみていきます。

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これは過去2年分の損益計算書を並べて比較したものです。ここから減価償却費の割合が高いこと、四半期利益の割合が少ないことから世界2位級といえど永続的利益をあげるビジネスモデルを築けていない可能性があります。

次に貸借対照表も同様にみます。

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この表から総資産利益率が低いこと、短期借入金は少ないが長期借入金が極端に多いこと、負債比率が高いことがわかります。

このような財務状況から、借入金が長期的にみると業績に影響を与える可能性が高く、また、水晶デバイス事業という過酷な競争下にさらされており、競争優位性を獲得していない可能性が高いです。世界2位でも厳しい業界ということがわかります。

 

大真空

水晶デバイス総合大手。音叉型や民生用振動子などシェア首位級。人工水晶から一貫生産に強みあり。上述と同様に決算短信からみていきます。

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大真空日本電波工業より早く2020年4Qより動きがみられます。

次にこの表をQoQで比較できるように計算します。

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そうすると明らかに日本電波工業よりも早く業績が改善していることが認められます。しかし、2022年3QにEPSが前年同期比でマイナスとなっており、成長の鈍化が始まっていることが推測されます。

次に損益計算書をみていきます。

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ここからは決算短信でみられた急激な成長に対して、売上高に対する純利益の割合が10%を超えたのはなんと2022年3Q、4Qのみとなっています。ここからは水晶デバイス事業という過酷な業界の競争に晒されているのがわかります。

次に貸借対照表も同様にみます。

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貸借対照表からは急激な成長に対して、負債比率が1を超えていること、何よりもROEが10%、ROAが5%を超えていないことが認められます。このままでは利益率が低いビジネスモデルであり企業の資産価値が増えにくい状況にあります。競争の激しい業界の中で厳しい状況にあることがわかります。このままでは長期的にみて総合大手の座が厳しいかもしれません。

 

リバーエレテック

水晶振動子等の電子部品の製造・販売を手がける。電子ビーム封止工法など独自技術に定評あり。上述と同様に決算短信からみます。

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リバーエレテックは大真空同様に2020年4Qより業績の伸びが認められます。

次にこの表をQoQで比較できるように計算します。

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そうすると大真空よりもさらに早く2020年1Qに業績の改善がみられます。ただし、他と同様に2022年3Qは業績の伸び率に鈍化がみられます。また、他2企業と比較して粗利率が数%高くなっています。

次に損益計算書をみていきます。

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ここでの特徴は他社と比較してSGA費の割合が低いこと、2021年1Qより売上に対する純利益の割合は10%を超えていることから、なんらかの競争優位性を獲得している可能性が高いと考えられます。

次に貸借対照表も同様にみます。

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ここからわかることは他社と比較して総資産利益率が約2倍、長期借入金の割合が低いこと、ROEおよびROAが明らかに高いことがあげられます。他の指標は他社と同等程度なので、ここからもなんらかの競争優位性の獲得が示唆されます。

リバーエレテックのマーケットシェアについては世界トップではないものの、商品に関しては世界最小級のものをつくっており、ここから競争優位性を獲得しているのではないのかと考えられます。産業の米である半導体はどんどん小型化が進んでおり、産業の塩である水晶デバイスもその必要性が出てくるため、世界最小級のものをつくれるのは長期潮流も捉えていると示唆されます。

ただし、財務諸表に現れる数値から世界最小級のものをつくっていること以外にもなんらかのビジネス的要因があると予測されます。

 

最後に

このようにみると水晶デバイスは今後もほぼ永続的に必要となる業界です。そのような中で日本企業がマーケットシェアを多く占めています。フォトリソブランク加工をはじめとした日本の固有技術は今後の優位性を保つと考えられます。

また、各社業績は近年急激な成長をみせていますが、直近決算では成長の鈍化もみられます。来年も同じような急成長は難しいことが予想されます。長期潮流を捉えている業界ですが、投資タイミングとなるとより一層慎重に見極める必要があります。

*今回の各社の業績分析では以下の2冊を参考に行なっています。

 

 

 

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