株式投資ファンダメンタル分析のすすめ③~ROE・ROAのとらえ方~
株価指標ではありませんが、株式投資でよく企業の経営指標の1つとして用いられるので、しっかりとポイントをおさえましょう。
ROEとは?
ROEは「Return On Equality」の略であり、「自己資本当期純利益率」といいます。決算短信や有価証券報告書などでは「自己資本利益率」と略されている場合もあります。
ROEは株主の所有分である自己資本を元手に、どれくらいの利益を稼ぐことができているかを評価するものです。
自己資本は、貸借対照表純資産の部の「株主資本+その他の包括利益累計額」で計算できます。
企業の収益力を利益の金額だけで判断する場合、規模の大きい企業のほうが規模の小さい企業より高いと収益力が高いと判断されかねません。そこで、「自己資本に対する当期純利益の割合」を使い企業規模に関わらずに収益力を評価できるのがROEです!
ROEは高い方がよい
ROEは高ければ収益力の高い優良な企業、低ければ収益力の劣る企業という評価がされます。一般的にROEが10%以上であれば収益力が高いと言えます。そして、ROEが高ければ将来の収益力があるため、企業価値向上による株価上昇も期待できます。
したがって、ROEが高いにも関わらず株価が低い、つまり収益力が高いことが正当に株価に反映されていない企業を探すのがよいでしょう。その際、ROEだけでなくPERも併用して考えるようにしましょう。
なぜなら、ROEは企業の収益性を示す指標ですが、株価を考慮して計算されていないからです。
ROEは、割安株を探すときよりも成長株を探すときに活用します。
ROAとは?
ROAは「Return On Assets」の略であり、「総資産利益率」といいます。ROAは総資産に対して、どのくらいの割合の当期純利益を得ているかを表した指標です。ROAは5%以上であれば優良と言われています。また、ROAは有価証券報告書にはのっていないので、計算して求めるか、四季報を参考にします。
ROAは売上高利益率と総資産回転率から構成されています。よって、ROAを大きくするには、これらを上げればよいことになります。
売上高利益率(=当期純利益÷売上高)は、利益率のことであり、売上高に占める利益の割合がどれくらいかを表しています。数値が高いほど、収益力が高いです。
総資産回転率(=売上高÷総資産)は、売上高が総資産の何倍かを表しており、その売上を上げるために、総資産を何回転させてたかとも考えられます。数値が高いほど資産を効率的に活用できています。
もし、総資産回転率あるいは売上高利益率が年々低下している企業があれば、やがてROAの低下、つまり収益力の低下につながります。
ROEやROAが上昇傾向、もしくは高水準を維持している企業でなければ、長期的成長は見込みづらいです。長期成長企業を探す場合、ROEやROA、そしてROAの構成要素である売上高利益率や総資産回転率の推移には注意しましょう。
成長株の投資ポイント
ここまでROEとROAについて述べてきたことから、投資対象とすべき「成長株」のポイントとして以下の4つがあげられます。
- 高成長:売上高や利益が年々増加(過去3~5年は堅調に推移)
- 高収益力:ROE10%以上、ROA5%以上をキープしている
- 将来の成長余地:売上高や総資産がまだ大きくない(適正価格を計算)
- 株価の上昇余地:株価がまだ大きく上昇していない(時価総額、チャートをチェック)
1.〜4.より、売上高や利益が年々増加し、ROEが高い企業であることはもちろんのこと、売上高がまだ小さく、株価もそこまで大きく上昇していないものが望ましいです。
つまり、高成長の初期段階にあり、企業規模がまだ小さいたいめ成長余地が大きく、投資家からの注目度も低いたいめに株価が大きく上昇していない企業です。
また、PERを併用した適正価格の計算方法はこちらの記事で説明しています。
レバレッジ経営を見極めろ!
レバレッジ経営とは、金融機関などから多額の借り入れを行い、積極的な事業展開により多額の利益を獲得しようとする経営のことです。
この方法は、借入金の返済や利息の支払いに困らないほどの利益を上げていれば問題はありません。しかし、事業が失敗するなどして利益が小さくなったり赤字になった場合、借入金の返済や利払いが困難になり、最悪の場合倒産の恐れもあります。
このレバレッジ経営のの見極めに有効なのが、ROEとROAの差を比較することです。
極端なレバレッジ経営をしていなければ、ROEとROAの差は通常2〜3倍程度です。
上の表から、ビッグカメラとファーマーフーズのROE・ROAに大きな差はありません。しかし、アミタホールデイングは約11倍の差があり、自己資本比率は15.9%、有利子負債は約16億円もあります。また、ウィルグループでは約10倍の差があり、自己資本比率12.9%、有利子負債は約96億円もあります。
このようにレバレッジ経営をしている企業は、ROEが高く、自己資本比率が小さくなる傾向にあります。リスクを取り、積極的に借り入れをし、より大きな利益を狙っている背景があります。
事業が今後も堅調に推移すれば株価の上昇も期待できますが、事業に失敗した場合は、倒産の可能性も伴うハイリスク・ハイリターンな手法がレバレッジ経営です。
株式投資では過大なリスクを避けたい場合は、レバレッジ経営をしている企業は投資対象から外すのもよいでしょう。
バフェット流投資
バフェットの投資判断基準は、PER15倍以下、ROE12%以上、売上高純利益率10%以上と考えられます。
ROEに関して「投資の際に最も重要視する指標だ」と言ってます。投資家が出資した企業が、預かった資産をどのくらい効率的に活用し利益を生み出しているかを表す指標のため、重要視されています。
以上のように、ROE・ROAは株価について評価できませんが、企業の収益力を評価でき、将来の成長性の判断材料として活用できます!
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株式投資ファンダメンタル分析のすすめシリーズとして、下記の記事を読むことで①PER ②PBRについてより深く勉強できます。